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発信力のある「変」な個性を伸ばす

10inc. 柿木原政広

素直で誠実な人というのを第一条件にしています。

●柿木原さんが採用の際に気を付けていることはありますか?

求人って本当に難しいですよね。面接で判断するのは本当に難しい。すごくシンプルなんですけど、素直で誠実な人というのを第一条件にしています。技術は正直やっていれば身につくもの。ただその技術を身につけるときに、素直さがないと成長の妨げとなってしまって、いつまでも吸収できない部分がどうしても出てきます。

●自分流のやり方にとらわれてしまっては、成長の機会を失ってしまいますよね。面接時にどのように判断をしていらっしゃいますか?

面接をしているときに、自分の話ばかりをされると困ることがあります。でもそういう人に「あなたはこういう判断をしているけど、そうじゃない判断をする人もいるよね?」とつっこむと、予想外の質問が来たことで動揺するんです。そういう時に、普段から話を聞く習慣がある人かどうか分かったりしますね。

●直近の採用はどのような感じでしたか?

あまり辞める人がいないので……みんなずっといるんですよね(笑)。ただ、今年の3月に1人独立したので、募集をかけようとしました。その時期が年末年始あたりだったので、基本的に新卒となる4年生は就職が決まっている状態だったんです。そんなときに卒業生の講評に行く機会があって、そこで気になる作品を出している人がいたんです。

話を聞いてみると、志望していた会社で採用直前までいったけれども、最終的に駄目だったとのことで。結局その人を入れることにしました。選んだ基準は、能力も勿論ですが、会社のメンバーに上手く溶け込めそうというような適正面でした。

●すでにあるチームにどう馴染めるかというところですね。

デザイン事務所は、そんなに大きいところは多くないと思うので、1人が持つ影響力が大きくなってきます。なので、能力だけで判断するということはまず無いですね。

自己肯定感は自分で作り出さなければいけないんです。

●入社後はどのようにお仕事をお任せしていますか?

10 inc.では、クライアントと直接交渉することが多いので、入社したときから、いきなり案件を任せています。僕がドラフトにいた時にもそういうやり方でした。もちろんステップはあるのですが、最初からアイデアを出すことが許されたり、人のスケジュールを管理したり、それによって業務に関連する色々なことを覚えていくんです。どうやってこの仕事が成り立っているのかとか、どういうスタッフが関わっているのかとか、基本的な流れが分かるようになると、その中で自分がどの役割を担うのか、ということを考えられるようになっていくんです。ドラフト時代はそういったような学べる機会が多かったので、自分もできればそういうやり方でやっていきたいと思っていました。

●現場を知ることがスキルアップの一番の近道になるんですね。

最初のうちはできなくて当たり前だと思います。でも何年か経てば必ず大きな案件を任される機会が出てくる。そうなると責任も伴うし、今までとは違った仕事の仕方をしなければなりません。引っ張って行かなければいけないし、指示も出さなければならない。こういうステップになったときに、きちんとできるかどうかは、案件について現場の感覚をしっかり持って向き合ってきたかどうかによると思います。

●そういった立場に至るまでに、どのような観点でコミュニケーションをとられていますか?

ちょっとこの人のここが変わってるな、という個性の部分を伸ばしてあげるほうが面白いんじゃないかと思っていますね。もっと変になってもらいたいというか、そういった部分を伸ばしてあげたい。よほど変にならなければ、本当の「変」にはならないですから。本人としてはその変な部分を抑えて生きてきたんだと思うのですが、その人はその人のままでいいと思うんです。

そういうほうが面白い。不思議なんですけど、変な部分を伸ばしてあげることによって、その人の嫌な部分や苦手な部分が見えなくなるんですよね。変な部分を気にするあまりに他の部分が上手くいかなくなっていることが意外と多いんじゃないかなと。その悩みを取り除くことで、これもできる、あれもできるんだって、色々なことが改善されていくんだと思います。

●褒めて伸ばすというのとは違うのですか?

違いますね。褒めて伸ばすというのは、駄目な部分も一緒くたにして褒めてしまう。それでは人を駄目にしてしまいます。そうではなくて、他の人に無いような変な部分だけを褒める。自己肯定感は自分で作り出さなければいけないんです。

人から言われて作り出していたら、言われなくなった途端、足が止まってしまいます。僕がこの人のここが変だなって思う部分って、周囲の人もだいたい同じように変だなって思っているんですよね。でも、ちょっと嫌な部分だな、と見ていることが多いんです。

そこで自分がその変な部分を伸ばしてあげることによって、もしかしたら嫌な部分じゃないのかも、このままで大丈夫なのかも、と周囲が思ってくれるようになる。そうすると、ギスギスすることも、足の引っ張り合いもなくなりますよね。

デザイナーは今、本当に勉強したほうが良いと思いますね。

●クリエイティブの現場ではなくても、当てはまることかもしれませんね。

働き方改革もあってか、叱るのが難しいといわれる時代ですよね。かといって安易に褒めるのではなく、どこを褒めれば良いのかを判断できるのが、上に立つ人の能力だと思います。褒め間違いをしてしまうと勘違いをさせることになってしまう。

難しいんですけど、本当に良いものだけを褒めることですよね。そうすると、結果的に良いものが出てくるようになりますし、周りから見ていても、この人のここが良いから、こういった作品が出てくるんだなということがわかる。認められているという自覚があると、接し方も自然と変わってきますしね。

個性って本当にバラバラなんですよね。自分の基準だけで人を見ていると、「この人は駄目だ、あの人は駄目だ」と批判するようになってしまう。そうではなくて、バラバラの個性の中にそれぞれの良いところを見つけてあげるという作業がポイントですね。その良いところというのも、入社前に無理に準備する必要はないんです。

生まれ持った資質のようなもので、後から作り上げることができない「正解」のようなもの。それを見つけ出して生かしてあげれば良いと思うし、そういう特性を伸ばしてあげられる仕事の振り方をしようと思っていますね。

●どのように成長していってもらいたいですか?

自分で発信する力を持っていないと、将来やっていけなくなります。ある程度のスキルや発想力、会話力があれば仕事は来るようになると思いますが、ただそれだけだと、来なくなったらもう終わりですよね。基本的に仕事って若い人に振りたいものですし、そこそこ年をとったときに「この人はこういったことが得意な人だから、この仕事をお願いしたい」と思われるようになっていなければならない。そうなると、発信している人としていない人だったら、発信している人のほうが確実に強いですよね。何を発信すればよいのか、またそれはどういうことなのか、自分で自分の資質を認識できているかどうかが重要だと思います。

自分が思う方向に物事を進めようとするとき、流れで行ける人と行けない人って出てきますよね。僕が思うに、その違いは「後押ししてくれる人がいるかどうか」だと思うんです。その人の行動や成果を、期待して見てくれる人ですね。期待されると期待に応えなければならないので、そういう関係性がたくさんあると、誰かにとっての「その人」で在り続けなければならなくなりますよね? もちろん本人次第ですが、そういった世の中の期待に応えようとすることで、自然とスキルもポジションも上がっていけると思います。

●期待に応えながら仕事に向き合うことで成長していけるんですね。

どうやったらそのポジショニングができるのかということを、仕事をしながら考えるのは大変なことですが、とにかく自分から発信することで、誰かの期待を得られるようになってほしいと思いますね。面接の際には、将来的に武器になるかもしれない何かを見つけようとします。その時に、素直さが無いと、人は応援したいという気持ちになかなかなれません。素直さがあれば周りは応援したくなりますし、期待されたらきちんと返そうとすることができるんです。

●先ほどの「素直さ」いう点に繋がっているのですね。デザイン業界で今後どのような人物が求められると思いますか?

デザインができるのは当たり前なので、数字が分かるとか、経営が分かるとか、デザインに関わる色々なことが分かる人が求められます。デザイナーは今、本当に勉強したほうが良いと思いますね。この道で続けていこうと思うなら、とてつもなくデザインが上手になるか、そうでなければ、デザインを世の中に出す道筋をどれくらい把握しながら進められるか、いわゆるプロデューサー的な視点が必要になりますね。

経営者の思考に近いものがあるので、そういった人から出てくるデザインは、データの裏付けや肉付けの作業がきちんとなされています。企業ベースの仕事だけでなく、地域ベースのものなどは特に、ビジネス的な観点だけでは解決できない問題もあります。

そうなった時のコミュニケーション能力も大事になってきますね。経済軸ではなく文化軸で動いている時に、何を価値とするのか。そういった時の解決能力も今、世の中で求められているところだと思います。

柿木原政広氏プロフィール

1970年広島県生まれ。ドラフトを経て2007年に株式会社10(テン)を設立。
JAGDA会員。東京ADC会員。
主な仕事にsingingAEON、まいにちAEON CARD、R.O.Uのブランディング、東京国際映画祭、
静岡市美術館、松竹芸能株式会社、信毎メディアガーデンのCI、美術館のポスターを多く手掛ける。
カードゲームRoccaをミラノサローネに2012年から出展。著作に福音館の絵本「ぽんちんぱん」「ひともじえほん」など。2003年日本グラフィックデザイナーズ協会新人賞受賞。NewYorkADC賞、ONESHOW PENCIL賞、東京ADC賞、GOOD DESIGN賞受賞。

■10 inc.
http://www.10inc.jp

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