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熱意のにじむポートフォリオづくりを

株式会社COSMOS内田喜基

整理や見せ方といったことがデザインの基本にある。

●採用の際にどういった点を重視されていますか?

まずはポートフォリオですね。基本的に履歴書とポートフォリオを送ってもらってそこから選考して、じゃあ会って話してみようということで面接へ進めていくんですが、そうするとポートフォリオが実際に会うまでにアピールできる唯一の材料なんです。

●内田さんとしては、どのようなポートフォリオが望ましいんでしょう。

たくさん作品が載っているポートフォリオが決していいわけではなく、一緒に仕事をしたいという熱量が感じられるものだと嬉しいですね。特に、うちはデザインの会社なので。整理や見せ方といったことがデザインの基本にあるはずなので、1ページ目にどういった作品を持ってきて、ページをめくってどういうストーリーがあるのかといった構成力、フォントの選び方、ルビの振り方、空間の使い方など、そういった細かな部分から、ここに入りたいんだという熱意が見えると思うんです。量販店で買ってきたようなファイルにただ作品だけ詰め込んであるようなものだと、クリエイティブな印象もなくあまり良くないですね。

●断片的な情報で選考しなければならないのは、やはり、たいへんな作業なんですね。

履歴書もよほどのことがなければ特に重視することはないので。ポートフォリオで、制作におけるクオリティはなんとなくわかりますし。あとは、その後の面接で会ってしまえばわかることも多いんですけど。それでも、せいぜい1時間程度ですから、印象とか所作を注視している程度ですが。やはり毎日会社で顔を合わせて仕事をしていくという前提がありますから、僕だけでなく、スタッフとも合うかどうかなども考えます。毎回なんですが、とても悩ましいですね。

●作品や印象以外のところで、内田さんならではの選考基準はありますか?

新卒に関しては、僕みたいな人を拾ってあげたいな、という思いはあります。僕は学生の頃、卒業が間近に迫るまで引きこもって制作を続けていて、就職活動らしいことはほとんど何もしていなかったんです。なんとなく大学院か専門学校に行こうかなと考えて資料を取り寄せてはみたんですが、積極的に行動するようなことはなく。働くイメージももちろん湧いていませんでした。就職が決まった友人たちは目をキラキラさせながら卒業式を迎えようとしているのに、これはいよいよヤバいぞ、となってから動き始めました(笑)。

●とても意外なお話です…

なんとか最後の三月のうちに二社ほど受かって、東京のデザイン事務所に入って仕事を始めることができました。なので、そういったことへの恩返しのような感じですね。決してスキルがないわけではないのに、何らかの事情でタイミングを逃してしまったような人。本当はちゃんとやれるのに、たまたまうまく噛み合わなかっただけで、悶々をしている人などですね。そういった人は、採用後に働き出すととてもよく頑張ってくれますし、いろんなことに熱意をもって取り組んでくれる印象があります。どうしても東京に出てきたいという地方出身の方だとか、そういった「背負ってくる」人もいい。ひらめきや直感で決めちゃうこともあるので、スタッフには「内田枠」だって怒られるときもありますけど(笑)。

わけがわからないものの中に、丁寧さやデッサン力が垣間見える。

●美術大学などのポートフォリオに関してはアート作品が多いと思うのですが、採用されると今後はデザイナーとして仕事をしてゆくわけですよね。ポートフォリオをご覧になる際、どういったところでその切り分けをされていますか?

アートという切り取り方ができているか、わかりやすく言うともう「なんだこりゃ」といったものでもいいんですが、その中で丁寧に作られているかをとにかく見ています。わけがわからないものの中に、丁寧さやこだわりが垣間見えるんです。その後の面接でお話を聞いてアート思考が強すぎると、ちょっと悩みますけど、結局自分もそうだったなと思うところもありますから、細かな切り分けについては難しい部分が多いですね。

●最近では内田さんもデザイナーの傍らアーティストとしても活動されています。デザインのお仕事にも影響があるものなんでしょうか。

アートってデザインとは違って、アーティストが、こう思う、というものがその人ならではの作品になっていく。始めた当時は思いもよりませんでしたが、最近はアート作品のテイストが僕の普通のお仕事にも求められる機会が増えてきました。お仕事として受注しているのが、どちらかというと女性的なデザインが多いので、どう受け取られるんだろうと思ってましたけど。今では作品自体が自己紹介に近いものになっている気がします。

●お仕事にも自分のアーティストとしてのテイストが求められるようになって、心境の変化はありましたか?

正直、アートを作っている感覚はなかったんです。学生時代に引きこもって作品を制作しているときも、美大って自己表現の場ですから、みんなやっていることだったので。当時はとにかく自分が面白いやりたいと思うものを作ろうという気持ちでしたね。でもその頃から、これで食べていくのは難しいだろうとは思っていました。どうすればアーティストとして結果がでるかは未だに不明確で、どう価値をつけてどう発信していくかといったことが大事だとは理解してなかった。自分の「Kanamono Art」の作品を持ってニューヨークのアートシーンに触れるようになって、ようやくそういったアートの仕組みのようなものがわかってきたところなんです。まだ勉強と経験の途中ですが、アートって夢や幻想的なものじゃなく、もっと現実的でシステマティックな、営業ビジネスツールのようなものなのかもしれないと。

●お仕事を続けてこられた視点だからこそ、見えてきた部分があるんですね。

そうかもしれません。絵がうまいということとアートでの成功はイコールじゃないんだと。うまい人が売れるわけではなく、戦略的にやらないといけない。まさに自己プロデュースの世界なんですよね。ただ黙々と絵を描いて、いずれニューヨークで個展を、などということはまずはあり得ない。アートに関してはまだまだ不確かなところが多いので、今のところ、そういったことなのかなと感じているだけですが。

ブランディングって、本当はもっと重いし深いはず。

●この「求人ノート」では、クリエイターの方に多くご利用いただきたいんですが、アートがやりたいと思って仕事を探されている方も中にはいらっしゃるかと思います。

デザインとアートはもちろん違うものですが、そういったアート系を志向していたスタッフがいました。伝統工芸などが得意だったんですが、大手のクライアントワークではない、自由度が高い仕事でうまく持ち味を発揮して頑張ってくれていましたね。ただ、やはりクライアントワークができる人のほうが、いろんな仕事に適応はしやすいとは思いますね。

●今はパッケージデザインや広告などのクライアントワークとブランディングデザインとの両軸で運営されていらっしゃいますね。

そうですね、それぞれ半分くらいの仕事量を目指しています。パッケージデザインや広告のお仕事とブランディングの分野とでは仕事の仕方が違っていてデザインする筋肉がちがうのでどちらも大事だと思ってます。

●ブランディングデザインをお仕事として受け持つ際に、難しい点などはありますか?

やっぱり、クライアント側が一緒に考えてくれないとうまくいかないので、大事なのはそこに理解があるかどうかなんです。自分たちの問題なんだということに自覚的になってくれないと本当に難しい。お仕事として引き受けられるかどうかは、金額よりもそちらが大きいですね。丸投げされたこともあるんですが、僕のスキルではとてもそういったところからは動かせない。どうしたらいいかわからなくていいんです。まずは愚痴でもいいので話をして、そうやって徐々にでもいいので一緒に取り組んでいく姿勢になってくれればと。

●そういった話を引き出すスキルというのも、今後デザイナーには必須になってきそうですね。

デザインも元々コミュニケーションが必須のお仕事ですからね。でもブランディングだと特に地方の案件など本当に全くの異分野のことを考えないといけないので、教えてもらう必要も出てくるんです。デザインって魔法みたいなものだと思われがちなんですが、わからないことはわからない。なので知識を共有してほしいと伝えています。企業や自治体からしっかり問題点や悩みを聞き出していかないと、表層的に作ったものや一過性のものでは、前に進んでいかないんです。

●最近はブランディングを美大などの授業で学んでいる学生も多いようです。

ブランディングデザインの事例がポートフォリオに入っているときもありますね。ブランディングがやりたいという人も増えてきている印象があります。楽しく仕事をやってるように見えるみたいですね。でも、ブランディングってリサーチから資料作成まで何でもやるので、作業としては雑務になりがちなんですよ。

パッケージひとつとっても、形状からどうするかとかは当たり前で、小道具屋に紐を探しに行ったり、桐箱制作の発注に対応してくれる工場を探して全国各地に電話したり。目に見えてこない業務がとても多いんです。労力をどうかけるか、クライアントの気持ちを汲んで、プランを立てていかなければならない。

そのためにはやはりお話を聞くことなんです。ブランディングって、本当はもっと考えることが多くて重くて深いはず。自由度が高くて楽しく見えても、自分だけではなく誰かと一緒に考えるものなので。まずはお話をしっかりうかがうことが大事だと思っています。

内田喜基氏プロフィール

1974年静岡県浜松市生まれ、2004年cosmos設立。パッケージなどの商品デザイン、全国各地のさまざまなブランディングやコンサルティングを行う。「金物アート」活動など多岐にわたる。主な受賞歴 Graphis(NY)Branding7 最高賞、D&AD(UK)銀賞・銅賞、One Show Design(NY)銅賞、A’Design Award(IT)パッケージ部門 最高賞、グッドデザイン賞、日本パッケージデザイン大賞銀賞ほか多数受賞。 著書「グラフィックデザイナーだからできるブランディング」(誠文堂新光社/2018))

■株式会社COSMOS
http://www.cosmos-inc.co.jp

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